ジャーナル

精神的なストレスで2型糖尿病のリスク増

肥満や高血圧、座りがちな生活習慣などは、2型糖尿病発症のリスク因子であることが広く知られている。しかし、女性では精神的なストレスもその発症に関与している可能性があることが、米カリフォルニア大学のJonathan Butler氏らが実施した研究から明らかになった。研究の詳細は、米国心臓協会年次集会(AHA 2018、11月10~12日、米シカゴ)で発表された。

米疾病対策センター(CDC)の調べによると、米国では2015年時点で2型糖尿病患者は3030万人と推計され、うち1200万人が65歳以上の高齢者とされている。また、2型糖尿病のリスク因子に関しては、糖尿病の家族歴や年齢、肥満や高血圧といった従来の要因以外についても研究が進められている。しかし、精神的ストレスと2型糖尿病との関連について検討した研究の多くは、職場のストレスや抑うつ症状、不安など個々のストレス因子に焦点を当てたものや、ある一定期間のみに実施されたものだった。

そこでButler氏らは、高齢の女性を対象に、さまざまなストレス因子と糖尿病リスクの関係を経時的に検討する観察研究を実施した。同氏らは、Women’s Health Studyに参加した女性医療従事者のうち心疾患の既往がない2万2,706人(平均年齢72歳)を対象に、急性および慢性のストレス因子に関する情報を収集し、平均3年間にわたり追跡した。急性ストレスには否定的でトラウマとなる出来事などが、慢性的なストレスには仕事や家族、人間関係、金銭問題、近所づきあい、差別などに関係するストレスなどが含まれた。

解析の結果、トラウマとなる出来事などの急性ストレスと家庭や職場の慢性ストレスはいずれも、ストレスレベルが最も高い女性では、新たに2型糖尿病を発症するリスクが倍増することが分かった。

これらの結果について、Butler氏は「従来知られているリスク因子と同様に、心理社会的なストレスも糖尿病のリスク因子として重視する必要がある」と述べている。また、研究の責任者を務める同大学内科教授のMichelle A. Albert氏は「公衆衛生上の観点から、糖尿病リスクを評価する際には心理社会的ストレス因子についても調べる必要があるだろう」と指摘している。

精神的ストレスと糖尿病リスクとの関係に詳しい米ジョンズ・ホプキンズ大学内科教授のSherita Hill Golden氏は、今回の結果について、「糖尿病の発症予防には、精神的ストレスなど従来とは異なるリスク因子も考慮することの重要性が浮き彫りになった」と評価している。また、同氏は「糖尿病予防には生活習慣への介入が有効だが、失業や家族の介護などで精神的なストレスがたまれば健康的な生活習慣を守るのも難しくなる。そのため、患者の社会生活についても尋ね、必要な場合はカウンセラーやソーシャルワーカーを紹介する必要がある」と述べている。

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